SS お客さん

こんにちは。

久しぶりにSS書こうとパソコンのフォルダーをのぞいたら
4月に1本書いた本当に短いSSが――

某国SNSのMさまのイラストに触発されて書いたものでした。

元となったのは、浩大の素敵絵で
胡坐を組んだ彼が、なにかの気配に気づく瞬間の、
ちょっぴり鋭い目つきがたまらない一枚でした。

というわけで、短いSSを。

【いつもの浩大】
━━━━━━━━
SS お客さん
━━━━━━━━

「・・・あぁ またお客さんか」

軽口を叩く彼は
あくまでも自然体だ。

胡坐をかいたまま音もなく
軽く肩を揺すり上体を起こす。

瞬きをしない彼の眼。

もし、客人に挨拶の時間が与えらたのであれば
鋭利な刃物のように切れ味鋭く暗い光を放つ無機質な浩大の視線に
ゾッと凍り付いたことだろう。

…だが、そんな猶予は微塵も与えられなかった。

「…まぁったく。
無粋なお客さんだっつーの」

「客」は音もなく膝から崩れ落ち、泥に頬を擦り付ける

「静かにしてくれよ、な」

…客の耳にはもう何も聞こえていない。

ざあっと樹冠を舐めるように強い風が拭きぬけ梢がゆれ
一瞬止んだ小鳥のさえずりが再び戻る。

定位置にストンと腰をおろした浩大は
スンと小さく鼻をすすりあげ、大きく伸びをする。

後宮の奥深く、誰も立ち入らないこの一角。

時折、ちちち…と微かにさえずる小鳥の声と
梢のざわめき以外は何も聞こえない。

見事な朱瓦の波うつ軒ごしの風景はいつもの通り。

瓦のように真っ赤な顔の妻を膝上に束縛し
この世で一番の幸せに包まれている主の姿を視認すると

彼は軽く目を閉じ、
再び気配を断ち世界に溶け込んでいくのだった。

(おしまい)

*


コメントを残す