SS クリスマスプレゼントを一つだけ

いよいよ師走ですね

このところどんどんログイン率が落ちていてごめんなさい

これからまた忙しくなります
ときどき会えたら嬉しいですね

【現パロ】【微糖】
設定:お付き合いをはじめたばかりの二人
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クリスマスプレゼントは一つだけ
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「何がほしいですか?」

「――?」

目の前の彼はぽかんと口をあけてわたしを見つめていた。

私は汗ばむ手を握り締め、それでも果敢に攻めるのだ。

「なにがって、何で?」

「クリスマスだからですよ」

「えー? まだずっと先だよ」

ちっともピンときていないみたい

「…なかなか会えないし。
今から準備しないときっと大変だから」

会いたいのに、
あえなくて。

会えても、
一緒に居る時間は短くて…

「夕鈴の負担になるくらいなら、なくていいんだよ?」

違うってば!

まったくもう――。
綺麗な男(ひと)なのに、そんなふうにとろけるような小犬の顔で。

笑ってわたしを甘やかすばかり…。

 * * * * *

彼は院生で、
サークルの先輩だけど、サークルにはときどきしか顔を出さない
…すごく忙しいヒト。

彼の研究論文一つで天地が引っくり返すと恐れられる寵児。
破壊力のある実績を持つ彼には大学教授ですらも頭を下げるほどで、
大学では知らぬ者のない「狼陛下」と呼ばれるまさに王様。

冷酷非情の狼陛下はいつも王宮と呼ばれる研究室にこもり切りで
特別な頭脳を持つ人達としか交流を持たないと聞いていた

雲の上の、手に届かないヒトだったのに
ひょんなことから臨時彼女をやる羽目になり
それからまあ紆余曲折、本をかいたらたぶん13冊分くらいにはなるであろう様々な出来事がありまして、ようやく気持ちが通じて今では本当の彼女としてお付き合いしているわけであります。

お付き合い、といいながら
ほんとうに忙しい彼と会えるのはほんの一瞬
はぁ…(ため息)

それも仕方がない。
みんなのために強い役割を演じている王様だから。
陛下は陛下なりにすごく頑張ってるんだから…。

私だけが知っているあの優しい人。

ささやかなことでいいから彼女らしいことを何かしたいなぁと思いついたものの、何をしたらよいのかわからない。

『じゃあ、せめてプレゼントくらい?』と思ったけれど
地位も名誉も金品もなんでも持っている王様の彼のことだから
はじめての二人のクリスマスなのに
何をプレゼントしたらよいのか、皆目検討がつかない情けなさ。

調査しようにも、陛下の側近の人に聞けばきっと盛大に呆れた顔で突き放されておしまい、だろうし、研究棟の管理人の爺やさんは(以前も変な本すすめられたりした前歴ありだから)きっとからかわれるにきまってる。

これ以上余計なことで彼の足手まといにもなりたくない。

じゃあ!

素直に、聞くのが一番だという
結論に至ったのだ。

だから、手短に聞き出そう、と決めてきたものの
目の前のヒトは…。(頭痛)

「庶民の私にできることっていったら
たかが知れてるとは思いますけど
それでも
あなたを喜ばせたいから
…教えてください」

うん、とうなずくと彼はケロリといった。

「なんでもいいよ」

「なんでもいいだなんて
いい加減なことはできませんっ!!」

「ぼくは、君からもらえるものなら
なんでも嬉しいよ」

それじゃあ、ダメ?といいながら、彼はキューンと小犬の顔をする。

小犬陛下が困ったような顔をするから
私もますます顔が赤らんだ。

それだめ、ずるい
ヘーカを困らせたいわけじゃないのに…

それでも付き合い始めて初めてのクリスマスにプレゼントなしとか
そういうわけにもいかないじゃない?

「へーか…」

「じゃあ
欲しいといったら
なんでもくれるの?」

小犬だった彼の目が
すうっと細くなる。

「…え?」

私はたじろいだ。

「ひ、ひとつだけですよ
たくさんは無理です」

「じゃあ、ひとつだけ」

「は…」

い、

と言う前に

「君を一つ、
まるごと全部」

と、耳元で囁きが聞こえた――。

(おしまい)


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