SS 創と病


お久しぶりです
織座舎のブログに入ろうとしたら、
ブログのページも
管理画面への入口も
なにもかも真っ白でびっくり(;゚Д゚)

(入れない)

雪?
雪の時期ですか??
春になって寝雪が解けるまでこのまま… ← ← ←

――気を取り直して

どうやらブログで使っているWordpressというソフトに組み込んでいるプラグインとやらのなにかとなにかが干渉しあっておきる現象だそうで、そのあたりの知識の薄い私にはまず入るところに四苦八苦でした

さて久しぶりに、
とりとめないSSですが

SNSにあげたものと同じです

よろしければ…

(おりしも
いい夫婦の日だったですよ、これが。)

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創(きず)と病(やまい)
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「あら、女官長さん。そういえば、いつもの侍女さんは?」

「…お妃様、大変申し訳ございません。風邪で熱をだしまして…」

「――えっ!? ひどいんですか?」

「いえ、たいした熱でもないのですが、お妃様に万が一うつしてもいけませんので」

「そうですか…はやく良くなるとよいですね」

胸を痛める妃の様子に、優しく女官長は微笑み返した

夕餉の打ち合わせで女官長が席を外した途端
一人になった夕鈴は考えた。

(侍女さんがはやく風邪がよくなるようなものでも…)

「そうだ!」
彼女は思い立ったようにこっそりテラスの窓から外に出た。

しばらくして

いつもより早い時刻に
チリンチリン…といつもの主の来訪を知らせる鈴の音が響いた。

はっと彼女は庭から部屋へ走り
部屋へ戻ると息を整え、夫を迎える

妃の前に現れた美丈夫の国王は「戻った」というなり、
妻を優しく抱きしめた。

「おかえりなさいませ!」

彼女の華奢な体ごと覆いかぶさるように抱きしめれば
いつもより紅潮した彼女の様子がおかしい。
そして、ゴツ…とした感触。

「?」

少し体を離し、確かめれば、何やら彼女の袖が膨らんでいる。

衣装の裾や袖には泥がついて
彼女の頬には少しだけスリキズがあった。

彼女の頬にある傷を見たとたん、
紅い瞳が曇り、鋭さを増す。

「…その、頬のきずは?」

「! へ?」

汗ばんだ指で、頬に触れるとちりっとした独特な痛みをともなった。
しまった、と夕鈴は顔を赤らめた。

「だ、大丈夫ですっ!
ちょっとこすっただけで――」

あわてて庭から戻った彼女は
ゆとりがなかった。

「…っ、きゃ」

彼はいきなり妃を抱き抱え
その頬の創(きず)を舐めた。

ゾロリとした熱い舌の感触と
ピリピリとした痛みが走り、
夕鈴は「逃げられない」と本能的に身をすくめ、観念した。

彼は彼女を長椅子の上に置くと
今度は遠慮なく彼女の検分を始めた。

「他に、怪我は?」

「…なっ…けっ、ケガなんて してませんってば」

袖からぞろぞろと出てくる
カリンにカキ、キンカン…。

彼は「ん」と眉をひそめた

「…これは」
彼女は真っ赤になって、収穫物を抱きしめた。

「ケガというか、こすっただけで
大したことは…」

くるりと振り向くと、彼は冷たい声で命令を下した。

「女官長、妃が怪我をしている
ただちに侍医を呼べ!」

「は!?」

晴天の霹靂の事態に、傍に控えていた女たちは固まり青ざめ
後ずさりして侍医を呼びに走った。

狼陛下の発するぴりっとした空気に満ちた後宮は
いつになく大騒ぎとなったが、
ようやく二人きりの静けさが戻る

妃の頬にはこれでもかというほど大仰な手当が施され
消耗した夕鈴はぐったりと眼をそらして座り込んでいた。

机の上には小さなカゴ

その中に、さきほど彼女の袖から出てきた果物が収まっていた。

状況的に
庭の果物をとったことは明白。

彼女の頬の手当が終わった布越しに
触れるか触れぬほどの繊細な指使いでそっとなぞった

彼の眼差しは厳しかった。

夕鈴はどう説明したものかと窮するも口を開かざるを得なかった。

夕鈴は、ショボンとした様子で申し開きをした。

「あの…ちょっと木登りして。
その時、ほっぺたを少しだけこすったかもしれません」

果実の入ったかごを取り上げ抱きしめ
夕鈴はさらに謝った。

「ごめんなさい。
庭の実を盗って…」

「かまわぬ、
この後宮にあるものは全て君のものだから」

そう言いながらも
彼の眼は厳しいままだった。

「その。
侍女さんが風邪で臥せっているというので
お見舞いにあげたくて…」

しどろもどろに顔を赤らめる妻の表情を意地悪げに睨んでいた彼は
唐突に「ぶっ」と吹きだした

そしてケラケラと笑い出した。

「その格好で。木に…登ったんだ」

「だって――」

夕鈴が質素を好むとは言え、
朝晩冷え込むこの時期の妃衣装は優雅で重たかった。

妃が木登りする様子を想像した彼は
またひとしきり笑い転げた。

あまりの様子にプットむくれてみせる夕鈴の様子をみて
彼は彼女の乱れた髪を指ですくと今度は頬に優しくくちづけを落とした。

「…君は優しいな」

彼の優しい仕草を受け入れ、ほっとした様子で夕鈴は緊張を解いた。

なのにまだ彼は怒っていた。

「誰かのために、君が傷つくのは許せない」

彼はまた拗ねた。

「ごめんなさい」
夕鈴はショボンとうなだれる

「君は私のものだという自覚が足りない」

「自覚?」

「…髪の一筋から、つま先に至るまですべて君は私のものであり、
私のためだけに存在するということを

もっと自覚して…」

「…へーか
あなたのために
私はここにいます」

耳元の呟きはため息のように小さかったが、曇りの欠片もなくきっぱりとしていた

影がおちるように
覆いかぶさると

息ができないほど
強く彼は彼女を抱きしめる

「私は君という病にかかってるみたいだ」

すべてを預け
まるで泣くように

低い声にこもる
迷子のような心細さ

傷ついているのは
私ではなく
この人なのだと

夕鈴は気が付く

「へーかは
私のことで、傷つかなくていいんですよ」

彼女は
軋むように彼の重みを受け止めて
その体に必死にしがみついた

「笑って」

「…はい」

微笑みとともに降ってくるのは
星くずの数ほどの口づけと。

*
(終)