SS何処も彼処も

こんばんは。気楽なSSです。

原作沿い・夫婦設定

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SS何処も彼処も
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うららかな昼下がり。
後宮の一室で妃が一人。

「――頭を冷やすのは…どっちよ!?」
誰もいない窓に向かって、ぶつぶつ愚痴を吐き出していたその途端、ひょこっと窓からぶら下がる影。

夕鈴は久しぶりに見たその笑顔に、ちょっとホッとしたものの、別の腹がおさまっていない様子だった。

「よー、お妃ちゃん、景気悪い顔しちゃって」

「なによ、そっちこそ。最近顔見せなかったくせに」

「わりぃわりい。ちょっとさ。用事を言いつかって外出てたもんで」

「ふうん――元気にしてたならいいけど」
夕鈴はプイッと他所を向いた。

「あー、元気元気。心配させちゃった?
それより、何。またへーかと喧嘩でもしたの?」

「喧嘩っていうか、ヘーカが一方的に」

「一方的?」

「たまたま官吏の一人が熱を出したから早退したいっていうから
どれどれって、いつもの調子でおでこに手を当てて熱を測ってあげたんだけど
たまたまその時にヘーカが通りがかっちゃって…」

それを聞いた途端、浩大は複雑な顔をして青ざめた。

「あーーーーー。
それは…


こっ・・・ええぇ~~~~」

「そうかしら?
浩大ったらちょっと大げさななんじゃない?」

「いやそれ、マジ、怖え状況だってば」

「そんなことないってば」

「なんでそんなヘーカ怒らすようなことするのさ。
お妃ちゃん、ヘーカのこと、怖くないの?」

「なんで怒るわけ?
一生懸命働いていらっしゃる官吏のみなさんの健康管理面を気にするのだって内助の功だし、それ以前に人間として病気の人の心配するのは当たり前のことでしょ?」

(はぁあああ…
いくら天然ってってもさー
そりゃ、へーかも気の毒だって)

浩大は盛大にため息をついた。

「よー。
じゃあお妃ちゃんさー
へーかのどこが好きなんだよー」

「そ、それは――
優しくて、強くて
私には勿体ないくらいで…」

浩大はあははと笑って

「そーじゃなくって、さ」

浩大の声だけが聞こえた。
クルリと窓枠を越え、すでに逃げの一手を打った彼の姿はなかった。

「陛下の
――手は、好き?」

「…手?」

――手…!?っ

その途端、彼の手に睦まじく触れられた感触を思いだし
夕鈴は真っ赤になってワナワナと震え出した――。

(おしまい)

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