SSS 気圧配置

こんにちは。

すごく短いです。
気分的にはリハビリ中で思うように筆もうごきませんが。

【本誌沿い】ネタバレというほどではありませんが、近々ネタを含みますのでコミックスはの方はご注意下さい。

**************
SSS 気圧配置
**************

「まことに面白くない」
小さなつぶやきがあたりを震撼させる。

周囲のことなど一切目に入る様子もなく、机上一点を見つめたまま黎翔は顎に指を添えた。

黎翔の脳裏には
もじもじと頬を染め、いじらしい妃の
まこと愛らしい笑顔、仕草が次々と泡のように浮かんでは消える。

(あれが、全て…)

黎翔は目を閉じ、小さく首を振った。

「私(の浮気)を疑って、だなど――!!」
再びカッと見開いたその瞳は、燃えるように紅い――。

山を揺るがす雷鳴が轟きゴゴゴゴと足元が崩れ落ち、辺りの空気は耳元でビリビリと振動した(ような気がした)

辺りの面々にとっては、これほど居心地が良い悪いこともない。

命の危険を感じるレベルの寒さに一瞬で背中が凍り付いた官吏らは、避難場所を求めソソクサと忙しそうに目を背けるしかなかった。

ここは政務室。

部屋の奥に鎮座まします主人のご機嫌が、すこぶる悪い。

…なにをどうしたものか

(こういうときの理由は一つないでしょう。
犬も食わぬ何とやら、そんなときのうっぷん晴らしといば――)

側近は主に気取られないよう、重たいため息を時間をかけてゆっくり吐き出す。

「――陛下」
李順が押し殺した低い声をかけた。

「なんだ」

周囲でギャ!と小さい悶絶がおきた。
黎翔の噛みつくような返事に官吏ら全員心臓が握り潰されたように感じ、数人がその緊張のあまり卒倒したのだ。

黎翔は一切関知しない。
ギラギラとただ赤い目を側近に向けた。

「――軍部のご視察の時間では?」

「…む?」
そうだったか?
そうお伝えしましたのに、お忘れですか。
ボソボソと問答が交わされる。

「このところ平和で、軍部も少々たるんだ雰囲気が流れております。
炎波国も我が国の軍備に内々視察の興味を示している様子。
諸外国の面々に侮られぬよう、
ここはひとつ陛下御みずから活をいれていただきませんと――」

そういえばそんな気もするが、炎波国の客人を迎えている今、面倒事を孕んでいなくもない。

(今取り込み中でそれどころではなく、むくつけき男どもの顔を見る気にならんのだが)
黎翔は渋面のまま肩にかけた外套を引き寄せ立ち上がった。

「では、ゆかねばならんな」

軍務は閲兵の準備を整えていたが、その折にさる筋からチラリと「陛下・天気予報」がもたらされた。

「大型低気圧、接近中!?」

「今日は――荒れる」
小さな嘆息をもらす大将軍の様子に、居並ぶ将軍らは身を引き締めた。

──────────────

おらおらおらおらおららららららぁ

──────────────

その日、思いのほかさっぱりした表情で
黎翔は後宮を訪れた。

ジト目の嫁が、涙を浮かべて出迎えた。

「――陛下。やっぱり
浮気してるんですね…」

(おしまい)

*


コメントを残す