SS ありがとう

ご無沙汰しております。

某国内の『新・現代風・時代物な黎翔×夕鈴』コミュニティは11月末をもって永久凍結となります。
最後のお祭りの余韻を。

 

トピック・フィナーレ祭11月22日「いい夫婦の日」に寄せて

[本物夫婦のピロートーク][微糖]
─────
ありがとう
─────

あたりは一面真っ黒で
そこには何も無かった。

目を覚ました途端に
私の目には涙がたまっていて

あいまいな記憶をたどろうと目をしばたかせた途端に
つつうと頬を伝って
流れ落ちた。

まだ頭の中はおぼろげで、
体には感覚もなくて、指先もなにもかもフワフワと浮いてる気がする。

いままで
私は
幸せな場所に住んでいた。

――そう
…住んで、いた、んだ。

そう思った途端、
堰を斬ったようにボロボロと熱い涙が
肌を伝い流れ落ちるのを感じた。

ついきのうまで
白く光輝く楽園にいたのに。

青や黄色、赤や白、ありとあらゆる様々に鮮やな花が咲き乱れ
あたり一面えもいわれぬ良い香りが漂よい
小鳥のさえずりのように笑いさざめく人々が次々と訪れ
暖かくて…うちとけた相手と笑い転げ
ここは
楽園だった。

なのに
もう、終わり。

もう
何も無くなっちゃうんだ。

誰ひとり立ち寄らない
何一つ
生きていない
場所に――

そう気が付くと
寂しさにきゅっと胸が絞られるように痛んだ。

働かない脳がきしみ
心は虚無の指に鷲掴みにされ
ただただ
途方もなくさびしくて。

わたしは
訳も分からず
ただぽろぽろと
涙をこぼした。

そのとき
闇の中に紅い光がともった。

ふいに暗闇の中からもぞもぞと何かがのびてきて、
鼻先に暖かいものが触れておもわずきゅっと目をつぶった。

伸びてきたのはあの人の指先だった。

手探りで慎重に私の顔の輪郭を辿り、掌で肌をなぞると、
私の濡れた頬でその動きをとめた。

「――夕鈴?
泣いてるの」

ゆさゆさと
世界が揺れる。

急に大きなあの人が動くと
伴にしている寝台がゆらゆらと揺れて
私は目が回る思いがした。

ちょっとだけ緊張し、ピンと一直線にこわばっていた体の下に
太い腕が差し込まれ
脚と脚の間に下半身を絡め取られるように挟みこまれて
すっぽりとあの人の香りに包まれた

懐かしい、人のにおい。

深々と息を吸い込む

「へい、か?」

あったかくてホッと体中の力が抜けた。

「ゆうりん」
また、名前を呼ばれた。

くすぐったくて心地よい。

声の主の存在は胸の中に広がって
闇を追い払い、
白い光が私をつつむような気がした。

「大丈夫」

その声に救われる。

忌まわしい暗闇は払われ
白く輝く泉のように温かく甘いものが
ひたひたと私の胸を満たすのだ

夢じゃなかった

陛下はここにいて
私はここに居てよくて。

…私たちは夫婦で。

ふう、ふ――という言葉に。
まだ思わず顔を赤らめる自分にじわじわと火が灯り
思わず絡め取られた肉体に生々しいぬくもりと重みを再確認してしまう。

思いもよらぬほど近しいところに
暗闇の中にボンヤリと綺麗なお顔が浮かんで、ドキッと戸惑う

「…陛下」

そんなふうにドギマギする私を
陛下はフッと顔を緩めて眺めると
いつの間にか至近距離で見つめ合ってるのに居たたまれず
自然に目を閉じてしまう。

タイミングを逃さず
口づけが落ちて。

まるで私が期待して目を閉じた思われちゃ嫌だからと
ささやかな抵抗を試みるのだけど
でもやっぱり男の人の力にはかなわない。

こじあけられたその先に
もっと甘い罠を仕掛けられるばかり…。

暗闇の中に甘い吐息が重なって
離れたとたんに
もう寂しくなる自分がいる――。

離れることが怖くて
寂しい。

「…」

うつむいて
私は恥じた。

「どうして
泣いてたの?」

「心配しないでください
ただの夢、です…」

「夢でも
君を泣かせるのは許せない」

瞬間殺気が走る。

この人は二人っきりのこんなときにでも
何にやきもちをやくのかわからないけど

「…大好きな場所が一つ
終わっちゃうんです」

私は正直に話した。

「…君は。
終わりが怖い?
…寂しい?」

「…」

静かな闇は二人のあたたかな寝床で
白い清潔な敷布に包まれて
力強く抱きしめられた。

「――君の大事な場所
だったんだね」

そう言われると、
とたんに涙がまたポロポロとあふれ出してしまう。

「…はい」

後頭部に大きな手が添えられて引き寄せられ
暖かい吐息が近づいて
おでこに小さな口づけが落ちるのを感じた。

私の涙で彼を濡らしちゃあだめ、と顔を背けようとしたら

「構わない
ぜんぶ
僕が受け止めるから
――話して」

彼はそういって暫く無言で私を抱きしめた。

「素敵な人たちと
たくさんの出会いがありました――
素敵な管理人さんとたくさん、たくさんの時間をすごしました

素敵なお話と
素敵な絵がいっぱいで
楽しいことばっかりでした。

くるくるめまぐるしく話が回って
息が止まるくらい
…幸せで
大切な場所。

ここは―――
私にとって…」

「そう…だね
でも
夕鈴。

終わりは
寂しいことでも、怖いことでもないんだ。

君のバイトの終わりは…
――どうなったっけ? 夕鈴」


彼は私の唇からその先を聞きたいと
小さく耳元で囁いた。

「ほ、本当の夫婦の…
始まりでした」

こんなことを言わせるなんて。
羞恥でカアっと体の熱が上がるのを感じた。

「ぼくの片思いの終わりは
二人の夫婦の始まりだったし」

「私も――」

その先は、彼が私の唇を強請るから
最後まで言えなかった…

陛下が私を望んでくださるのは、嬉しい。
でも、私は…身分違いの高望み

正妃でもない
認められていない出自不詳の身分の低い妃で…
この先どうなるのかも
何も分からないけど。

でも
私はここから先も
陛下ととともに歩みたい、と。

長い長い口づけと抱擁に翻弄されて
うたかたの幸せを私は紡ぐ。

「今は、一瞬後には過去になる。

でも
終わったからといって
今感じている幸せを
失うわけじゃないんだ。

甘い吐息も何もかも。
ここでともに過ごせた時を
いつくしめばいい

幸せな時を
ともに過ごせたことは

これからさき
一つも変わらない

新しい未来を歩み始めようと

瞬間の喜びをともにすごした事実は
なにもかわらない
君も。ぼくも。

ぼくたちはだから
今この時をいつくしむことを大事にすればいい。

なにも哀しむ必要なんか、ないんだ」

「――はい」

「愛してる」

「私もです
陛下と
そして
こんな素敵な居場所を守ってくれた管理人さんと
素敵な仲間たちを」

私がそういうと、
至近距離の陛下の紅い瞳がちょっとだけムッとしたように曇ったと思った瞬間、
やぶから棒に私の首筋に痛みが襲った。

ピリぴりとした噛みあとを
もう一度舌で舐め上げると

「夕鈴は
ぼくだけのもの――だ」
といって
私の上にのしかかる様に口づけを降らせる。

「しかし私からも礼を言わねばならんかな。
皆にはいろいろしてもらったから…」とため息交じりに陛下は言うと

「新・現代風・時代物な黎翔×夕鈴 トピックに
心から祝福を」と小さくつぶやいた。

「さくらぱんさま、みなさま。
あとちょっとですね。
おつかれさまでした」

わたしたちは二人で抱き合ったまま
幸せな眠りに落ちた。

ありがとう。
みんな。

*

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グランドフィナーレ(宝塚風)

グランドフィナーレ(宝塚風)

下書きのつもりで青い鉛筆線で書き始めた落書き、お目汚しですが…。
ちなみに、題材はSSとは直接関係ありません。


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