SS なつむし

こんばんは。
夏ですねー
無事、本日入稿を終えました
委託の方も予定しておりますのでご安心ください。

前回のお知らせのガラケー対応についてですが、
やっぱり効果がでているという反応がなかったみたいです
申し訳ありませんでした。

短い夏のお話を一つ。

【バイト妃】
気に入りすぎた夕鈴を
早く逃がしてあげたいとおもいながら
どうしても手放す踏ん切りがつかない
陛下のお話。

* * * * * * * * *
SS なつむし
* * * * * * * * *

――いつ、君を手放そう?――

わたしは最近、
そんなことばかり考えている。

まだいい
もう少しだけ…

そんなふうにずるずると
短いバイトの予定だった君を
手放せないでいる。

突如、ミンミンと耳元でセミが鳴いた。
思考がとまる。

顔を背けると
手をのばせば届くほどの枝に
透き通った羽のセミが止まっている。

ただのなつむしであれば
私も
何の躊躇もない

お前は
苦労がなくてよいな。

手を伸ばして掴む。
あっけなく囚われる、なつむし。

手の中でビリビリ羽ばたきもがき
大きな鳴き声をあげ、腹を震わす

ああ
あの娘もこんなふうに
私の手の中でじたばたと
必死でもがき
大声で泣き
そして笑った。

囚われのなつむし
恐怖を与えるのはわたし。

手を放せば
一瞬で飛び去るであろう

閉じ込めれば
たった七日間かそこらの儚い生

虫かごで過ごすより
おまえは
自由に外界に在るほうが似合っている

たとえいつか、私の知らないところで
その生を終えるとしても

私は君が君らしく居られる場所に
放つべきなのだろう

行け
お前の世界に帰れ――

手を放せば
なつむしは一直線に飛び出して
もう空の彼方に消え去った

何も残らない
何も残さない
なつむし

だがきっと
彼女は残す

一緒にすごした
時の欠片

君はずっと笑っていてほしいと
ただそれだけを望むのに

脳裏に君の笑顔が浮かぶたび
なぜ胸が痛むのだろう

私はだから
君を手放せない。

(おしまい)

*


(余談)
■なつむし
1 夏の虫。夏の夜、灯火に寄ってくる虫。火取り虫。
2 ホタルの異名。
3 セミの異名。

今回はこのうちの(3)セミの異名 でお話の題材に。

■セミと寿命
今回はミンミンゼミをイメージしてます
陛下が住んでいらっしゃる地域にミンミンゼミがいるかどうかは知りません。
セミの寿命は七日間というのは、飼育が難しくすぐに死んでしまうため、以前はそう思われていたという俗説だそうです。
セミによっても寿命は異なるそうですが、ミンミンゼミは地下で6~7年、地上に出て羽化し成虫の姿で2~3週間の寿命だそうです。野生の環境下で追跡調査ができるような方法が見つかって正確に分かってきたんでしょう(そもそも昔は、たかがセミの個体の寿命が1週間であろうが1か月であろうが、そんなに問題はなかったでしょう)。暑い時期はセミにとっても消耗が激しいらしくやはり短命で、秋ごろ少し涼しくなってから羽化した成虫のほうが長生きという話も聞きます。地球温暖化でセミさんも辛いんじゃないでしょうか。

でも、七日の儚い命、というフレーズが耽美のツボなので
SSでは俗説の方の寿命設定を採用しました。


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