SS 夏来にけらし白陽の

暫く空けておりご無沙汰して申し訳ありませんでした。
更新が滞っているにもかかわらず覗いてくださった皆様、ありがとうございます。

その間に
夏がきてしまいました。

夏向けの短いSSです。

【原作沿いパラレル】
設定はバイト妃or本物妃、お好みで―――。

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夏来にけらし白陽の
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川岸に枝を張りだす松の枝にかかった薄桃色の絹織物と
金糸銀糸を織りこんだ優美な帯が風をはらみなびく。

はだしのまま駆け出し出す彼女は
結い上げた長い髪が乱れようと気に留めもしない。

滑らないように慎重に岩から岩へと移ると
足首ほどの深さの浅瀬にトプンと足を踏み入れた。

苔むした岩をちらちらと木漏れ陽が撫で
高い木々に囲まれ奥まった窪地を潤す清流の音をバックに
ポチャポチャと呑気な水音が立つ。

「冷たくて
気持ちいいですねー。

――あ…!
ほら、へーか!
お魚っ!」

裾を腰までたくし上げ、白いふくらはぎをさらした彼女は
無邪気に魚を目で追っている。

(――まさかの川遊び。
清流の誘惑には勝てなかったんだね、君は)

上等な薄絹の妃衣裳が汚れるのを嫌う彼女は
金糸を織り込んだ帯を解き、上衣を豪快に脱ぐと松の枝に引っ掛け
下に着ていた単衣一枚で果敢に川遊びに挑んだのだ。

彼はハラハラしながら腰に下げた剣を外し、
彼女の後を追った。

だが時すでに遅く
薄い単衣の白生地は足元で跳ねる水を吸って、彼女の肌を透かし体に貼りつく。

知らず仕掛けられた罠に気が付いた彼は
思わず視線をそらし森の切れ間から見える遠い雲を見るふりをするが
その間にも、はしゃぐ彼女の声と
バシャバシャ水の中の魚を追って大股に歩きまわる気配が届くので
気が気ではない。

(どうにかなってしまいそうだ)

それは、彼女へ対する心配だけでなく
己に対しての不安。

(本来、我慢は得意じゃないんだ――)

戦場の鬼神と呼ばれた男でありながら
今にも陥落しかねない自分を押しとどめるのに必死。
――手ごわい戦いになりそうだ

クラクラと誘惑に負けそうな気持ちを押さえ
「――眩しいな」とつぶやき
さりげなく手で顔を覆い視線を戻すと、
彼女は魚を追うことに夢中だった。

自分の姿が目に入らない彼女。

それがどれほど彼を危機に陥れているのか気づいていない

「ヘーカ!
そっちにお魚が逃げますっ!
回りこんで下さい」

「ゆーりん、
気を付けて…」

「…キャ!?」

短い声が上がった

川底の苔に足を滑せ
彼女の上体が大きく傾いた。

思わず腕を差し出し抱き留めれば、
広がるのは腕いっぱいの柔らかい感触。

彼女はちょっと汗ばんでいて、
水しぶきで濡れヒヤッと冷たい単衣とその下にある、張りつめ火照った身体が
フルフルと震えていた。

「全く。

――私に
どうしろと言うんだ、君は――!」

「え――?」

重なり遮られた口許

冷たい水の中に
いっそ二人して沈もうか

消すか
燃やすか
夏の――

*


4 thoughts on “SS 夏来にけらし白陽の

    • 暑いのもゆーりんが可愛いのも夏のせいですね
      とけた二人をどう李順さんが回収するか…が実に見もの(笑
      このお話には直接出てきませんけど
      きっと近くにいるような気がしてなりません

  1. ふふふ、この後は我慢ができずに・・・?
    夏ですね。先週からようやく蝉が鳴き出したなぁと思ったら、今日は朝からもういいよと言うぐらいうるさく鳴いてました・・・。早朝から台風に備えて庭木を3本切ったので出勤前に汗だくになり勤務意欲がそがれました(仕事したくないのはいつものこと?)。しかも私の振休日に台風が来る予定・・・ついてないわぁ。

    • 台風一過、御無事でしょうか
      そちらのほうは台風直撃で大変な大雨では…
      セミみんみんしゃわしゃわ、カエルぴょこぴょこみぴょこぴょこです
      風が強いうちはお気を付けて…

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