SS なつむし


こんばんは。
夏ですねー
無事、本日入稿を終えました
委託の方も予定しておりますのでご安心ください。

前回のお知らせのガラケー対応についてですが、
やっぱり効果がでているという反応がなかったみたいです
申し訳ありませんでした。

短い夏のお話を一つ。

【バイト妃】
気に入りすぎた夕鈴を
早く逃がしてあげたいとおもいながら
どうしても手放す踏ん切りがつかない
陛下のお話。

* * * * * * * * *
SS なつむし
* * * * * * * * *

――いつ、君を手放そう?――

わたしは最近、
そんなことばかり考えている。

まだいい
もう少しだけ…

そんなふうにずるずると
短いバイトの予定だった君を
手放せないでいる。

突如、ミンミンと耳元でセミが鳴いた。
思考がとまる。

顔を背けると
手をのばせば届くほどの枝に
透き通った羽のセミが止まっている。

ただのなつむしであれば
私も
何の躊躇もない

お前は
苦労がなくてよいな。

手を伸ばして掴む。
あっけなく囚われる、なつむし。

手の中でビリビリ羽ばたきもがき
大きな鳴き声をあげ、腹を震わす

ああ
あの娘もこんなふうに
私の手の中でじたばたと
必死でもがき
大声で泣き
そして笑った。

囚われのなつむし
恐怖を与えるのはわたし。

手を放せば
一瞬で飛び去るであろう

閉じ込めれば
たった七日間かそこらの儚い生

虫かごで過ごすより
おまえは
自由に外界に在るほうが似合っている

たとえいつか、私の知らないところで
その生を終えるとしても

私は君が君らしく居られる場所に
放つべきなのだろう

行け
お前の世界に帰れ――

手を放せば
なつむしは一直線に飛び出して
もう空の彼方に消え去った

何も残らない
何も残さない
なつむし

だがきっと
彼女は残す

一緒にすごした
時の欠片

君はずっと笑っていてほしいと
ただそれだけを望むのに

脳裏に君の笑顔が浮かぶたび
なぜ胸が痛むのだろう

私はだから
君を手放せない。

(おしまい)

*


(余談)
■なつむし
1 夏の虫。夏の夜、灯火に寄ってくる虫。火取り虫。
2 ホタルの異名。
3 セミの異名。

今回はこのうちの(3)セミの異名 でお話の題材に。

■セミと寿命
今回はミンミンゼミをイメージしてます
陛下が住んでいらっしゃる地域にミンミンゼミがいるかどうかは知りません。
セミの寿命は七日間というのは、飼育が難しくすぐに死んでしまうため、以前はそう思われていたという俗説だそうです。
セミによっても寿命は異なるそうですが、ミンミンゼミは地下で6~7年、地上に出て羽化し成虫の姿で2~3週間の寿命だそうです。野生の環境下で追跡調査ができるような方法が見つかって正確に分かってきたんでしょう(そもそも昔は、たかがセミの個体の寿命が1週間であろうが1か月であろうが、そんなに問題はなかったでしょう)。暑い時期はセミにとっても消耗が激しいらしくやはり短命で、秋ごろ少し涼しくなってから羽化した成虫のほうが長生きという話も聞きます。地球温暖化でセミさんも辛いんじゃないでしょうか。

でも、七日の儚い命、というフレーズが耽美のツボなので
SSでは俗説の方の寿命設定を採用しました。

[お知らせ] ガラケー対応について


サイト関連のお知らせです。

ガラケーの方から、こちらのブログとの相性がよろしくないようだと聞きまして、ガラケー表示に自動切り替えするプラグインを導入してみました。
ただ私がガラケーを持っておりませんので、果たして使い勝手が良くなったのか、以前より使いにくくなったのか、あるいは特に変化なしなのか、確認することができません。
もしガラケーユーザー様で、何らかの変化を感じられたようでしたら、お手数ですがアンケートにご協力いただけると大変うれしゅうございます。

ありがとうございました。

[日記]カバージャケット絵


こんばんは。
本誌早売りでした。
そちらは、ネタバレスレッドと、明日の発売日以降にセットして。

近況としては
絵をかきました。

「小犬ファミリー・青の庭」の新刊の締切が迫ってまいりました。
そんなわけで、昨日から今日にかけて、お仕事の合間をみて
ちょっと必死なお絵かきです。

最近週末の方が平日より忙しいという異常事態で
身を削ってとんとんからりのとんからり。

ひさしぶりにソフトを立ち上げたら、更新手続きが大変でした ←
…どんだけサボってるのやら。

締切的にこれ以上先延ばしできない
表紙がつけばいいや…です。

速いのだけが取り柄というか
打合せの時間が割愛できるというメリットはあります。
そして失敗しても自分のやっちまったことなら自己責任
おおらかに容認しております。

(ほんとうに絵師さま本気で募集)

表紙の描き方――ですか?
(すみません、ぜんぜんご参考にならないとおもいますが)
だいたいこんなかんじでやっつけました

■工程

下絵描いて、塗って、デジタル加工、レイアウトの順番
(ごく普通だと思います)

■技法
とか
そういうのは特に分からないです?
こだわるポイントとかが分からないまま今にいたっております。
完全に自己流
作品に合わせて塗り方とかも変えるし、その瞬間に萌え出づるパッションというかライブ感を大事にしております←(ようするにテ×トウ)
結構複雑というか、適当に使い慣れた部分を使い慣れたソフトで対応しているというか。
複合的に用いています

■モチーフ
今回のお話しは半分以上がお子様ありの本物夫婦設定なので
ファミリーっぽい表紙にしようかと思いました。

青空の下、陛下と小犬ファミリーが戯れている絵も構想していましたが
人数が多すぎて断念しました orz
やっぱり登場人物は少ない方が楽です←
小犬ファミリー・青の庭 表紙絵-下書き

クリップスタジオで下書きして線描き。

陛下がお膝抱っこしてる絵にしました。

「新書判はけっこうコンパクトだから、バストショットでいいんじゃないか」と
胸から下は適当でいいや~と割り切りました ← 割り切るの速い。

そうはいいつつも、レイアウトしてみないとどこからどこまで欲しいか
ときどき気分が変わるので一応もう少し下まで用意はしておく。

01

色、さらっと塗ります。
最初はどちらかというとオレンジっぽい色だったのですが
クリップスタジオで描いた原画にフォトショップで色を塗り足し
更に色調調整をして青っぽく仕上げました。

夕鈴の表情は一発で決まったのですが、問題は陛下。
優しいお顔がいいなぁと思いましたが
なかなか陛下の顔が決まりません。

「本物夫婦設定・お子さん有り」という内容が大部分を占める本なので
大前提は押し出さないといけないんですけど
家族愛がテーマ?(というより家族が増えても夕鈴にメロメロ)

それに
お子さんがいるにしても
相変わらず仲睦まじい『二人』がメインのお話しなので
あんまり生活臭がないほうがいいなぁ。

でも幸せな雰囲気は必須。

陛下はさらっとポーカーフェイス的な?とか。

…おっさん臭くなるくらいなら、むしろ幼児返りして可愛いくらいのお顔でもいいかしら
とか。
悩めば悩むほど、ドツボにはまるものです。

子犬ファミリー・青の庭(表紙)

子犬ファミリー・青の庭(表紙)

イラストレーターでレイアウト
ざっくり組みます。

背景の陶器で用いられる文様にあわせて主線を青で強調して重ね
タイトル文字は
「シリアスだけじゃないですよ、ギャグもありですよ」を主張しつつ
ちょっと明るめ遊び要素プラス(のつもり)

組んでみると
(イラストの段階では陛下は眼をつぶっていたのですが)
ちょっともの足りない感じがしたので
陛下がうっすら眼を開けたバージョンに描き直しました。

(うーんうーん。時間があればもう少し戦うかもです)

本物夫婦、お子さんあり設定ということで
お二人のお子さん(オリジナルキャラクター)を描き込みました。

でも
「家族」という要素は必須ながら、
お子さんの「個性」は不要、居るという存在感だけでいいの。
(今回のお話はそんなかんじです)

あくまでも陛下と夕鈴のお話ですよーということで
(各々の想像力の邪魔になる場合もあるし)
そのままの顔だしやめました。
(可愛い御子さんに文字被せるなんて非道)

まだ少し置くと、気持ちが落ち着いて違う面が見えてきたり気づいたりするので
表紙はだいたい2~3日は間を置くようにしています。

手直しするかもしれませんけれども
だいたいレイアウトはこんな感じで落ち着きました。

カバージャケットと表紙が形になってくると
ひと山越えた感じがします。

あとは本文の最終校正――。

ページ数が多いので
なかなか進まないです(くすん)

にしても
気が重い表紙をあげるとずいぶん気が楽。

では、みなさまお元気で(*^_^*)

*

[お知らせ]新刊予告と懺悔と虎さんお取り寄せ


ご無沙汰しております。

いっきに梅雨明けし、急に暑くなりました…眩しすぎて眼があけていられません。
みなさまお元気ですか?


■夏コミのお知らせ

コミックマーケット88で、新刊を出させていただくことになり、現在編集作業に鋭意努力中です。
(濃密な修羅場できないほど忙しいのでうっすら修羅場です)

—————————
夏コミ 2日目 8/15 土曜日
東サ09a 黄昏博物館&織座舎
—————————

今回、わたしは現地参加できなくて本当に申し訳ないです
>_<;ゴメンナサイゴメンナサイ…orz

もしご来場の折はお立ち寄りいただければとっても嬉しいです


■新刊 ゆる~い情報

今回出す予定の新刊は、なんと過去最大のページ数になりそうです
(だいたい360頁くらい)

自分の作品が好きとかいうと手前味噌で恐縮ですが
大好きな短編「小犬ファミリー」(陛下と夕鈴が幸せに大勢のお子さんに囲まれるお話し)

小犬ファミリー・リターンズ」続編(李順さんが子どもたちと夫妻に翻弄されるお話し)
それから
Pちゃんさんが読みたいなーといってた
「てすさびの」「王の環」の続編にあたる「青の庭」シリーズも一緒に入れちゃえ!
みごと官吏登用試験に合格した青慎君の目を通して、陛下と夕鈴のお忍び下町ツアーを語るお話しで…
ハチャメチャかとおもえば、実はかなりシリアスです。女官長はあんまりでないんですが、他のオリキャラ度は高し。
「青の庭」入れるなら「青の庭 番外編」もね――。

――女官長、と申しましたが
そういえば上記の2シリーズは、どちらも女官長がちらっと出てくるのです。

女官長、静麗(おりざのオリジナルキャラクターで、女官長というのは表向き、実は死神リーリーと恐れられる凄腕の暗殺者)

「じゃあこの際、リーリーの出るお話はザックリまとめて総集編にしよう」と思い立ち
「ならついでに未完作品だった『ギャラリー』、加筆して完成して一緒に納めてしまおう!!!」
という流れで無茶に拍車がかかる事態に。

ギャラリー」は、最初調子良く連載しておきながら、あるところでぱったり筆が止まってしまった作品。

その後ことあるごとに何度も常連のRさんから
「ギャラリーの続きを読みたい」とリクエストいただいて、
「いや、まだ時期じゃない――」とかいいながらお茶を濁していたら

ついにキリ番まで踏んでくださって(!?無欲の勝利)
「キリリクはギャラリーの続きを」と来ました。

書かなきゃいけなかったんですが情けないことに
「うーん、今はまだちょっと」
「書けたらでいいですよ」と優しく仰るけれど、もんのすっごく残念そうです。
「じゃあ、書けたら」といいつつ
―― 時~はぁ~なが~れー 月日はめぐーるー という筋金入りの未完の作品でした(過去形)
――だが、もう未完とは言わせません!(急に鼻息荒く)

重い腰をあげた私はやり遂げました。

――ついにっ 2年越しの歳月を経て
堂 々 完 結 (?)です!!(涙)

そんな胸張れるようなことではないんですが…。

この場をお借りして、懺悔です。

あの人は遠いヒト
手の届かないお星さま
眼にふれることさえなくなったとしても
この『ギャラリー』はRさんに捧げます。

女官長さんの出る作品としては
もう一つ。
王の環のスピンアウト(番外編)で、幼い黎翔太子が北の辺境の離宮で暮らした頃の短編をオムニバス風に5本まとめた「海棠の郷」も納めました。
浩大と、その兄妹(オリキャラ)、そして三姉妹の師匠=リーリーの昔話です。
原作沿いの二次創作のそのまた先になりますが、どうしてもこのお話群は納めておきたかったのでツッコむことに――。

(そしてまた首が締る――)

自分の中でのオリキャラ感。

オリキャラは『もろ刃の剣』と申しますか
自分の世界観を作るのには大変便利なのですが
読み手様側の立場を鑑みれば、いろいろな感じ方があると思います。

書いている自分的にも
陛下と夕鈴に関わってオリキャラが動くうちはよいのですが
オリキャラだけで話が進むのは二次作品の本流とはちょっと異なるのではと思ってしまったり――

そういうわけで、女官長さんはとっても好きで大切なキャラクターなのですが
彼女が中心になって話しを書く様になったら
それは二次創作というより、スピンアウトでオリジナル創作を書くべきではないかな、と思うようにもなり
徐々に彼女が出る作品を絞る――実際自分の中の抑制がかかって行った時期だったなぁ…と思い返されます。

(しいて言えば、刺青の男(既刊「秘密の苑・刺青の男」)の枝だけが少し残っているのですが)
そういう意味でも今回の「小犬ファミリー・青の庭 総集編」は
女官長さん(=リーリー)からの卒業…みたいな?意味がこもっている、というのは自分の中にはちょっとあります。

で。無理しちゃった。(笑)

いくつも作品名を挙げましたが
どの作品も、2013年頃書いていた作品なので(青の庭の続編だけ2014年の頭に書いていたと思います)
ご記憶のある方より
初めてという方の方が多いんじゃないでしょうか…。

折しも当時、本誌は陛下が弟君に会うために夕鈴をつれて地方視察に出かけてゆくあたりの進み具合で
バイト妃がもっと本当のプロ妃めざして、陛下の甘い罠にはまっていたころ

原作沿いで
微甘で切ないのが書きたい
シリアスも書きたい
でも、ギャグも書きたい
…… みたいな感じ気楽に書いていた頃の作品に、大幅に加筆修正を行っております。
(楽しいけど大変)

初期のころの作品を、まるっとまとめて
どーんと行っちゃえ
と、――――気楽にへたな野望を持ってしまったがゆえに、

現在血反吐を履いております。

なぜそんな無茶な企画になったかというと
分冊すると表紙をたくさん書かないといけないのが面倒だったから、――です。
(新書判でカバーをかけたシリーズで統一してるものだから、表紙とカバーとただでさえ手間が倍。というやつです)

それに、分冊するよりずいぶんお得な感じがするから
お得という言葉に弱いんです(?)

…ということでお許しください。
ズボラで本当にごめんなさい。


■夏コミ 持ち込み予定

夏コミには
<新刊>
・小犬ファミリー・青の庭 総集編(仮題)
<既刊>
・王の環(残部少なめ)
・短編集
・現パラアンソロ

あたりを持ち込む予定です。


■虎の穴 取り寄せ販売のお知らせ

現在虎の穴さんで、取寄せ販売を行っていただいております。
取寄せ販売は、過去の作品に対して予約注文のあった分だけ、書店へ納めて、それをみなさまへ届けていただくシステムです。

期間限定 2015/07/19 ~ 2015/08/25

締切後、納品してお届けになるため、暫くお待ちいただくかとおもいますが
のんびりお待ちいただければ幸いです。

■虎の穴で7/19~8/25の期間、取り寄せ販売中の作品

○織座舎
短編集(1)
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/22/05/040030220536.html?FAV150719

てすさびの 総集編
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0030/17/65/040030176561.html?FAV150719


今回はただのお知らせばかりですみませんでした。

夏休み
夏休み
夏休み…… 仕事憑きの母親に、なつやすみなんてないーーーーと
叫んでおきます。

ではお元気で。

SS 夏来にけらし白陽の


暫く空けておりご無沙汰して申し訳ありませんでした。
更新が滞っているにもかかわらず覗いてくださった皆様、ありがとうございます。

その間に
夏がきてしまいました。

夏向けの短いSSです。

【原作沿いパラレル】
設定はバイト妃or本物妃、お好みで―――。

* * * * * * * * * * * * * *
夏来にけらし白陽の
* * * * * * * * * * * * * *

川岸に枝を張りだす松の枝にかかった薄桃色の絹織物と
金糸銀糸を織りこんだ優美な帯が風をはらみなびく。

はだしのまま駆け出し出す彼女は
結い上げた長い髪が乱れようと気に留めもしない。

滑らないように慎重に岩から岩へと移ると
足首ほどの深さの浅瀬にトプンと足を踏み入れた。

苔むした岩をちらちらと木漏れ陽が撫で
高い木々に囲まれ奥まった窪地を潤す清流の音をバックに
ポチャポチャと呑気な水音が立つ。

「冷たくて
気持ちいいですねー。

――あ…!
ほら、へーか!
お魚っ!」

裾を腰までたくし上げ、白いふくらはぎをさらした彼女は
無邪気に魚を目で追っている。

(――まさかの川遊び。
清流の誘惑には勝てなかったんだね、君は)

上等な薄絹の妃衣裳が汚れるのを嫌う彼女は
金糸を織り込んだ帯を解き、上衣を豪快に脱ぐと松の枝に引っ掛け
下に着ていた単衣一枚で果敢に川遊びに挑んだのだ。

彼はハラハラしながら腰に下げた剣を外し、
彼女の後を追った。

だが時すでに遅く
薄い単衣の白生地は足元で跳ねる水を吸って、彼女の肌を透かし体に貼りつく。

知らず仕掛けられた罠に気が付いた彼は
思わず視線をそらし森の切れ間から見える遠い雲を見るふりをするが
その間にも、はしゃぐ彼女の声と
バシャバシャ水の中の魚を追って大股に歩きまわる気配が届くので
気が気ではない。

(どうにかなってしまいそうだ)

それは、彼女へ対する心配だけでなく
己に対しての不安。

(本来、我慢は得意じゃないんだ――)

戦場の鬼神と呼ばれた男でありながら
今にも陥落しかねない自分を押しとどめるのに必死。
――手ごわい戦いになりそうだ

クラクラと誘惑に負けそうな気持ちを押さえ
「――眩しいな」とつぶやき
さりげなく手で顔を覆い視線を戻すと、
彼女は魚を追うことに夢中だった。

自分の姿が目に入らない彼女。

それがどれほど彼を危機に陥れているのか気づいていない

「ヘーカ!
そっちにお魚が逃げますっ!
回りこんで下さい」

「ゆーりん、
気を付けて…」

「…キャ!?」

短い声が上がった

川底の苔に足を滑せ
彼女の上体が大きく傾いた。

思わず腕を差し出し抱き留めれば、
広がるのは腕いっぱいの柔らかい感触。

彼女はちょっと汗ばんでいて、
水しぶきで濡れヒヤッと冷たい単衣とその下にある、張りつめ火照った身体が
フルフルと震えていた。

「全く。

――私に
どうしろと言うんだ、君は――!」

「え――?」

重なり遮られた口許

冷たい水の中に
いっそ二人して沈もうか

消すか
燃やすか
夏の――

*

SS 邯鄲(かんたん)の枕


お元気ですか?
台風が仲良く3つ並んでいますね

息抜きの
短かくてゆるーいSSです

当たり前すぎて、がっかりしないでください。

【原作沿い(時系列不明)】【陛下目線】

* * * * * * * * * * * *
邯鄲(かんたん)の枕
* * * * * * * * * * * *

白陽国王、珀黎翔は狸寝入りを決めこんでいた。

開け放たれた窓から、初夏の涼しい風が頬をなぶる

「…へーか…」

小さい、だが慎重な君の声。

「…」

すぅ、すぅと呼吸の微かな音。

ぼくの呼吸に合わせていつしか君の吐息も重なっている

また君の呼吸が一拍遅れた…

――呼ばれる頃か。

「…へーか」

君の声は心地よい。

何度呼ばれようと
私は寝ているのだ。

私は今日も沢山仕事をした。

今、王宮の政務室のすぐそばの一室で
ささやかな休息を取ること

――それは正当な労働の対価だ。

その細い腰に腕を回し
思う存分彼女の柔らかい下腹に頬を埋め
膝の上で極上の夢を見続ける

醒めることのない夢だと思いたい。

君が私を呼ぶ声は、心地よい。

「そろそろ起きてください」

かるく揺すぶられる。

「へーかってば」

君の指先が触れたところに、温もりが灯る。

何度呼ばれても、
君の温もりを私は手放したくないんだ。

離れたくない

…君も、そうでしょ?

風が止んだ。

ビク、と彼女は身震いをして
柔らかく弛緩していた彼女の筋肉に緊張が走る。

「――陛下!」

冷静な男の声

「――!? 
…なんだ、

李順」

自分でも思ってもみない程、低くて凶悪な声が出た。

仕方なく私は目を開ける。

ゆらりと立ち上るシルエット。
視線の先にはやはり――ヤツ。

夕鈴は気の毒なほどビクビク逃げ腰だ。

「――私は休憩中だ。
なぜ邪魔をする?」

「…陛下のご指示通り」

「指示など出しておらん」

「私はしばし休む
用があれば呼べ、――と仰いましたので」

奴は
作り笑いをしたまま恭しく
袖の下から書簡がずらりと並んだ大き目の文箱を取り出した

――この男は
遠慮というものを知らん

…まったく。

*

[宝物]沙希さまのキリ番踏ませていただきました~^^


先ごろ、白友沙希さまSNSのお宅の45000アクセスを踏ませていただく機会に恵まれました。

よそさまのキリ番踏めるというのはほんとうに久しぶりで
その上、貴重なキリリクを受け付けていただけたものですから、
もう飛びあがって喜んでしまいました。
((((´ω`*))))ウフフウフフ

というわけで、リクエストです。
—————————–
元気の出る 心のビタミンなお話し
—————————–

沙希さまよりいただいた素敵な宝物。

当ブログでの公開にご了承いただけましたので
皆様にもお披露目させていただきます。

…では、沙希さまより~


元気が出ると仰られていたにも関わらず元気が出る?といわれると少々疑問が残る出来映えになってしまったので、もし思っていたものと違うようでしたら書き直せと仰ってください!
明るいと元気が出るの違いが理解できない何かかも知れないと思っています。
一応、本誌沿いかなという感じで、陛下一行がもう一度蓉州にいく話です。

*****

「いつかと同じですね」

夕鈴は黎翔とが離れる前に共に行った地に、再び降り立っていた。
晏流公が住んでいた場所。
そして、蘭瑶の企みが潰えた場所。
三度目に訪れたそこは以前と変わらない穏やかな空気が流れてーーは、いなかった。

「あれ?」

夕鈴はきょろきょろとあたりを見回し、首を傾げ真っ先に黎翔を見、続いて傍らに立つ李順、浩大、克右へと視線を移す。
しかしその誰もが、どうして夕鈴がそんな顔をするのかわからないという顔をするばかり。

「李翔様……?」

仕方なく夕鈴の視線はまた黎翔へと固定され、そのままたくさんの疑問符でいっぱいになった。

「どうしたの?」

そんな視線を向けられても、黎翔はようやく娶った妻の顔を見ては頬をだらしなく緩め笑うばかり。
夕鈴の顔色の変化になど、まるで気づいていないようだった。

「あのーー」

全員があまりにも当然のような顔をしている、その場所。

「なんで、こんなに人がいないんですか?!」

そこは、周りに人っ子一人いない。

びゅうびゅうと音を立てて通り過ぎる風。
今にも飛びつかんばかりに嬉しそうな、黎翔。
他の三人が同時に、ため息をついた。

「うん。僕たちだけで、いい感じだねー」

場違いな黎翔の声が響き、とうとう感極まったかのように夕鈴に抱きつく。

「……李翔様。説明してらっしゃらなかったのですか?」

李順がおそるおそるといった調子で黎翔に訪ねる。
黎翔は楽しそうな……本当に楽しそうな笑みを浮かべた。

「だって、ちょっと肝試しするだけだから!ね」

それは、きっとそんなに簡単なことではない。
抱きしめられたままの夕鈴は前に並ぶ三人の姿で、それを悟った。

***

「蘭瑶様の亡霊……ですか?」

夕鈴の頭にたくさんの疑問符が浮かぶ。
なにせ夕鈴は、蘭瑶とともに王宮で生活しているのだ。
間違いなく、蘭瑶は生きている。
亡霊など存在するはずがないのだ。

「そうそう。なんか、実際に襲われたっていう被害まであってねだから、僕たちで保養もかねて原因調査にきたってわけ」

そういってまた黎翔は暑苦しく抱きついてきた。

軒並み値下げされていた飯店の一つ。
ようやく落ち着きをとりもどした黎翔! がようやく事態を説明してくれる気持ちになったらしい。
所狭しと並べられた料理を次々口に入れながらも、起用に黎翔は話し始めた。

「ここは大切な場所だからさ」

夕鈴は黎翔の言葉で、必死に勉強した地理を思い出す。

「隣国との国境線に近いから、あまり人がいなくなると困る……でしょうか」

黎翔は一瞬驚いたような表情をした後、殊更嬉しそうに首を上下に動かし、皿に箸をのばした。

「だから肝試しがてら僕たちで行って、亡霊なんていないって証明すればいいんだよ」
「あれ、でも。それって私たちがわざわざ……」
「だから、新婚旅行も兼ねてね」

にこっと黎翔が笑い、男三人が目を背ける。

「あっちの三人にはもう少し町での噂の浸透具合とかを調べてもらって、僕とゆーりんは肝試し」

遊ぼう遊ぼう、と黎翔の幻のしっぽが振れた。

(肝試しって、そんな簡単に考えていいのかしら
?)

夕鈴は少しだけ、頭の痛くなるような思いがした。

ーー翌朝。
当然のように夕鈴と同じ部屋に宿泊した黎翔は上機嫌で、朝出会った三人に手を振った。
その直後にはもう夕鈴の肩を抱いて、くるりと背を向けさせる。

三人の目が夕鈴には若干痛いが、隣に並び立つ黎翔が本当に嬉しそうで何も言えない。
夕鈴が一番、その笑顔を見ると『まあいいや』と思ってしまうのだ。

小犬も狼も等しくその本性に変わりはない。
でも、だからこそ。
夕鈴は黎翔のどちらの面も大事にしたかった。

王宮にいる黎翔は、やはり圧倒的に狼だ。
後宮に戻ると小犬のことも多いけれど、両方が本性だと告白してからは狼のことも増えた。
巧みに使い分けられる顔に翻弄されることは多いが、そのすべてが黎翔という一人の人間を形作っている。
だから、少なくとも自分はその黎翔の様々な面を等しく尊重して認めたい。

どちらかでいる時間が多いというのは、バランスが悪いように感じられた。
だから、二人きりで小犬が増えるなら、その機会を増やしたいし、黎翔が楽しいと思えることをなるべく多く与えたかった。
少なくとも今の黎翔は本当に嬉しそうで、楽しそうだ。

その為には李順の殺気や克右のため息、浩大のにやけた顔つきは関係なかった。

「行きましょうか」

未だに慣れない、黎翔の甘い甘い微笑み。
それに負けまいと夕鈴は心の中でガッツポーズを決めて、思いっきり元気よく言ったのだった。

***

「うーん、そんなに変わりないですね」

夕鈴は屋敷の前に立った瞬間、あたりを見回していった。

夕鈴も少しはこの屋敷で働いたのだ。
雰囲気が異なれば気がつくと思っていた。

けれど、屋敷は手が入らなくなったことで少々寂れた雰囲気になってはいるものの、特に怪しいところはない。
寂れるといってもついこの間まで人が生きていたという雰囲気は保っているし、草木が延びたな……という程度のことだった。

なんでこんな平和そうなところで妙な噂が流れるのだろう、と夕鈴が首を傾げつつ黎翔の顔を見ると、何故か黎翔の方は随分険しい顔つきで、草を見ていた。

「李翔様……? あの」

噛みしめられた唇に、赤く揺らめく瞳。
フードなどでは隠しきれない、殺気。

「夕鈴。静かに」

黎翔の視線が、徐々に茂みの奥へ奥へと移ってゆく。
それと同時に黎翔の左手が夕鈴の肩へと伸びて、夕鈴は押されるように後ろに下がった。

そうする間にも黎翔の瞳はより厳しく、より鋭く。
獲物を見つけた狼のそれへと変貌してゆく。
夕鈴はその黎翔の鋭さに、よもや本物の幽霊が存在したのではないかと、恐ろしくなってきてしまった。

なんとなく黎翔の明るい雰囲気に飲まれてここまで来てしまったが、相手が幽霊では戦いようなど存在しない。
どうやって逃げたらいいのかもわからない。
でも黎翔がいればきっと大丈夫だろう……そう思ってしまうのは、夕鈴の勝手な考えだろうか。
ーーそう思って、黎翔の事を止めようと、帰ろうと袖に手を伸ばしかけたとき。

茂みの一角に向かって、黎翔の剣先が煌めいた。

剣を振り下ろされる瞬間、茂みが大きく揺れて、何かがこちらへ向けて飛び出してくる。

(ーーーーーーっ!)

夕鈴が怯えている間にも黎翔の剣は踊るように動き確実にそのものを追いつめ、気づけばその喉元まであと僅か、というところで正確に剣を止めた。
ソレは剣を首もとに当てられながらも必死に黎翔の事を睨みつけ、負けまいとしている。
けれど見るからに震えあがって、見ているこちらが可哀想に思ってしまいそうだった。

「何を考えて騒ぎを起こした?」

黎翔が尚厳しい顔つきを変えることなく、目の前にいた『子供』に問う。
以前切っ先を向けられたままの少年は、今にも大粒の涙を瞳から零しそうになっていた。

「答えなければ、切る」

幼子相手にも容赦のない狼陛下は、子供をひたすら厳しい視線で見下ろしている。

「李翔様っ」

黎翔の本気を感じた夕鈴は、思わず少年の事を抱きしめ、黎翔の剣から遠ざけた。

「ちいさな子供ではありませんか!」

見た目から判断するなら、齢は十を越えないくらいだろうか。
少し古くなった衣装に身を包んだ少年は夕鈴に抱きしめられしばらく呆然とした後、大声で泣き始めた。

「で?」

少年は黎翔が近づけば逃げ、夕鈴にしがみつく。

「李翔様」

黎翔の眉間による皺は深く、それを窘めようと夕鈴は名前を呼んだ。
相手が賊ならともかく、こんな小さな子供にこの仕打ちはないと思ったのだ。

夕鈴に睨まれた黎翔はしばらく見つめ合った後、一つため息をついて、諦めたように微笑んだ。

「ほら、この人は怖くないからね」

夕鈴は少年の頭をゆっくりと撫でた後、黎翔の方向かせる。

(ほら)

と視線で優しげな表情を作るように促す夕鈴に応えて、黎翔もなんとか笑った。

***

「だって、蘭瑶様と瑛風様が連れて行かれたんだ」

ここから動くのは嫌だと言う少年を宥め、三人は手近な飯店に入った。
何でも頼んで良いといえば、少年の瞳はきらきら
と輝き、メニュー表に釘付けになる。
座る席は当然のように夕鈴の隣で、まだ少し黎翔を警戒するような様子が見られた。

ようやく持ってこられた暖かなメニュー。
少年が決めて、三つ注文された。

「君は字が読めるのか」

黎翔が尋ねれば、少年は一瞬怯えるような表情を見せた後話し始める。

「蘭瑶様に習った」

その話に、今度は黎翔と夕鈴が驚かされる番だった。

話を要約すると、実は蘭瑶はこの地で貧しい子供相手の私塾のようなことまでしていたらしい。
そして蘭瑶がいつ帰ってきても良いように、自分たちが学んできた場所を賊などから守る為に噂を流し、人を寄りつかせないようにしていたというのだ。

黎翔と夕鈴は顔を見合わせて驚いた後、その少年としばらく行動を共にし、まるで親子のような時間を過ごした。

それから、しばらく。
蓉州に新しく官営の学校ができた。
授業料はタダ同然で、それを目当てにやってきた人々によって、また活気を取り戻したらしい。
場所はもちろん、元の蘭瑶の屋敷だった。

「子供っていいですね。青慎もかわいいし、あの、男の子も……」

夕鈴の脳裏には、最後はもうしがみついて泣きださんばかりの表情を浮かべた少年のことが思い出されていた。

「ふふ。僕の子供、産んでみる?」
「ちょっと、陛下……っ」

本物の夫婦になった夕鈴と黎翔は、そんな冗談とも本気ともとれない言葉を言って笑いあった。
けれどその楽しい笑いの波が過ぎ去った後、夕鈴の頭の中に蘭瑶の顔が思い浮かぶ。

(子供が、お好きだったんだ)

蘭瑶様が瑛風様を真実どう考えていたのか。
夕鈴はずっと心の中で、その答えを見つけられずにいたけれどーー。

「うん! 私いくらでも産みますよ」

明るい声が、後宮に響いた。

おしまい

長々とおつきあいいただきありがとうございました!
沙希


沙希さまの素敵な作品を読ませていただいて、とっても幸せになりました

ほんとうにありがとうございました

おりざ

[日記]のーかを終えて…(雑談)


こんばんは

今日はすごい雨だったりあめじゃなかったりしました
皆様お元気でお過ごしでしょうか

以下は雑談ばっかりの日記ですが失礼いたします。

「狼のーかの花嫁」が終わりました。
初出が2014年10月29日となっておりますから、ちょうど丸々8か月かかったわけです。

途中、連載中断が数度ありましたのでいろいろご心配おかけしました。

どちらかといえば
自分は短期集中決戦タイプかなあと思いますが
案外耐久レースでもなんとかなったと(ほそぼそ)…

それはさておき。

断続的な連載の最中に種々雑多なストレスが発生し(ブログの引越しや、プチオンリーや、新しいブログではコメントいれるのにも登録が必要とか少々勝手が違ったり、等々)ご訪問いただく皆様方には大変ご迷惑をおかけしました。

いろいろありましたけれども、こうしてまだご訪問いただけることに感謝です。

のーかを書きはじめたころは、本誌の方は離婚編のまっただ中でした。
それで(時期的に)ハロウィンをネタに、ギャグとパロディで元気の出るバカバカしいお話しが書きたいなぁと思ったものでした。

狼陛下の花嫁のキャラクターは全員大好きです。

自分的には「原作ありき」で
(現代パラレルであっても、ギャグになっても、ファンタジーしちゃっても
いろいろな後付けの要素をトッピングしたとしても ← やりたい放題?)
自分の中にある『原作のイメージを大事にしたい、守りたい』という想いはあって
原作のキャラクターのイメージとか存在感を損ねない様に書けるといいなぁと思っています
(できているかどうかは別として)

今回のお話は30話でまとめましたが
三倍は書けるだけの要素を突っ込んでしまった
伏線もこっくーの闇商人の話、結局拾えなかったり(…本編で書けなきゃ続編があるわよ、みたいなノリ)だからといって続編は期待しないで下さい。

夏コミあわせの本の方も、そろそろお尻に火をつけないといかんようです(ヒト事みたいに)。
お仕事もけっこうミッチリギッチリなので
その合間にかけるようなSSのネタを拾いながら、暫くは過ごしたいと思います。

突然ですが
どなたか「小犬ファミリー」のお話にあう挿絵を、恵んでくださいませんか?

応募要領は、下記の通り

■内容
小犬ファミリーにあったイラスト ※シーンは自由
■原稿規定
黒一色
ハガキサイズ程度の手書き原稿
または
データ入稿(幅105×高さ175mm 以内)600dp~1200dpi
(一頁の大きいサイズでなくても小さいカットでもOK)

■原稿アップの締切:7月15日頃
(上記は最終的な入稿締切です。ページ合わせの都合がありますのでお問い合わせだけでも先にいただけると助かります)

落書きのつもりくらい
肩の力抜いていただいたので
充分ありがたいですー

描いてもいいよーという方はコメント欄もしくはお問い合わせメールで
(入稿方法や詳細については個別にご対応いたします)

小犬ファミリーとはなんぞや?

陛下とゆーりんが結婚して
ころころころころお子さんが生まれる子だくさんファミリーのお話しです。

メロメロなへーかとゆーりんとか
ちびちびな子どもたちぞろぞろとハッピーなイラスト
お待ちしております ←

冗談と思われたらスルーしてください。

そしてぜんぜん関係ない方向に
いきなり話は横道にそれますが

ころころ、だらだら、といえば
「ねこあつめ」というスマートフォンのゲーム
ときどき覗くと癒されます…。

でも
煮干しだけ平らげられて、
愛らしいねこ様のお姿がほとんど見られない

たまーにのぞく程度なのが宜しくないのでしょうか
(問題はそこ)

amazonで、図鑑とキーホルダー(コンプ)狙ったりするのは―――悪い大人ですか?

 

雑談ばっかりで失礼いたしました。

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