狼のーかの花嫁(28)

こんにちは
いつもご訪問くださり、ありがとうございます

少し溜まった疲れに低気圧が乗算されたのやら
昨日は一日頭痛を友として
…でもまあ
久しぶりにのんびりお布団でゴロゴロしました

さて
お話もラストステージに向け着々進行中
いよいよ収穫祭を迎えまして
メイン・イベントに向けて夕鈴と浩大も隠密行動中なんですが―――

また登場人物が増えちゃいますよ
いまさら。

【現パラ】【パロディ】【ファンタジー】【つむじ風】

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狼のーかの花嫁(28)
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その時、突然夕鈴の背後から声がかかった。

「…ねえ、ちょっと。
…私の愛しいウサギちゃん」

「――はい?」

振り返ると、大きな日傘をさしたとても美しい女性が立っていた。
「…ひょ、豹?」
夕鈴は振り向いてぎょっとした。
彼女が身に着けていたベルベットのヒョウ柄ドレスにはキラキラと数えきれないほどの宝石が輝いていた。
大胆な柄とデザインなのにもかかわらず、決して下品ではなく、むしろ高貴であった。

ボリュームのある胸元をギリギリ絶妙なラインで包み込み、キュッとしまったウエストを一際引き立てる。
長い裾の左脇には大胆にスリットが入り、腿の付け根からすらりと伸びた脚を大胆に披露し、
その爪先には金色に輝く華奢なピンヒール。
そのひとは見たこともないような美しい女性で、夕鈴は思わず顔を赤らめてしまうほど。

艶やかな長い黒髪に、長いまつげ。
端正に整った顔立ちにくっきりと赤いルージュがとても良く似合っていた。

「ど、どちらさまでしょう?
お人違いじゃ――」

夕鈴はおどおどと返答をした。

「…あなたのことよ、愛らしいウサギちゃん!」

美しい女性は夕鈴に向かって手を伸ばすと、細長い爪にはキラキラ光るその指で、つううっと、彼女が身に着けている被り物のウサギ耳の輪郭をなぞった。

「えっ!?」

風が吹き、フワリと良い香りが漂ってくる。
ポカンと見上げると、ジッと夕鈴を見つめている彼女の赤い瞳とバッチリと目があってしまった。

彼女は、帽子越しにサラサラかぶる夕鈴の前髪の下にある“それ”をさりげなく見極めるとニコリと笑った。

「――その仮装、良くお似合いだこと」

「はっ?
ええと、あの?」

夕鈴は頭の上に乗せていた大きな黒い帽子をしっかりと両手で引っ張って慌てて被りなおす。

『あたりを見回せば、自分と似たようなウサギの仮装をした人はたくさんいるのに。
何、何? ――どうして?』夕鈴はいぶかしがった。

「金色ウサギ、でしょ? なんて可愛らしいのかしら」
女性は夕鈴の頭上のウサギ耳をゆっくりと撫ぜた。
美しい女性にそう言われると悪い気はしないが…それでも今は誰にもばれないように隠密行動中だと思うと夕鈴はハラハラしてしまう。

(ちょっと待ってよ、浩大。
これが一番目立たない格好って言ってたくせに、しっかり目立って――)
慌てて浩大を目で探すが、グルリと見回しても浩大が見当たらない。

その頃、浩大は辻の角に身をひそめ「げ、ヤベー!」と冷や汗をかいていたともしらず、
夕鈴は戸惑いながらも既に女性のペースにはまっているのだった。

「その仮装、金色ウサギでしょ? 
とっても美味しそう。
でも、もっと磨きがいがありそうね?
せっかくのお祭りなんですもの。
ねえ、これも何かのご縁じゃないかしら。
――ちょっとあなた、わたくしとご一緒しない?」

(…?)
優しく引っ張られ、夕鈴は焦って立ち止まる。

「え、あの――せっかく、すみません。
でも私これから行くところが…」

「まあ、どちらに?」

「あの。その、収穫祭のイベントを見に行こうかなぁって――」

「あら! あなた、狼陛下の公開評議を見にいくの?
――それなら、なおさらよ、ね。私と参りましょ♪
特上のお席だから、よく見られるわよ」

「…え?」
特上の席って?
よく見られるって――??

内心冷や汗がダーッと流れながらもあれよあれよという間に、夕鈴はその女性に手を引かれてしまう。

「えええ? …あの、その」

「わたくし、瑠霞姫」

「る、瑠霞――姫!?」

(姫ってことは、王族? じゃあ、陛下のご親戚――?
…確かに、紅い瞳とかへーかと一緒だし
こんな美人で高貴な雰囲気っていったら…)

瑠霞姫と名乗った女性はニッコリと妖艶に笑いかける。

(でも、陛下のご親戚が、どうしてこんな街角にいるの?
そもそも初対面の私が妃とか、知らないはずでしょ?
もしかして額のへーかの印、見られちゃったのかしら?)と
夕鈴の頭はグルグル回るが
何がなんだか分からずに戸惑うばかり。

「あなたのお名前は?
可愛らしいウサギさん?」

「て、汀、夕鈴と申します。よろしくお願い申し上げます」

(…陛下のご親戚というのなら、陛下の恥にならないよう
ちゃんとしなきゃ)

夕鈴は恭順の意を示し、丁寧に頭を下げた。

「うふふ…夕鈴ちゃんっていうのね?
あそこに私の馬車があるの――さあ」
と指された方向に夕鈴がひょいと首を回すと、
そこには花々やリボンを飾りたてた大きな檻の乗せられた白馬六頭立ての馬車が用意されていた。

瑠霞姫がパチンと指を鳴らした。

「――あれに乗って、私と参りましょう」

一瞬気を許した夕鈴の身に、とんでもないことが待ち受けていた。

美しい人は、指先で指揮でも振るようにスッと宙を切ると
馬車の上の檻の戸がパッと開いた。

今度はヒュッとつむじ風が吹いて、
夕鈴をふわりと風が巻き上げ「きゃっ!?」と声を立てたものの
時既に遅しとばかり
あっという間に彼女は檻の中に吸い込まれていた。

瑠霞姫は豹のようにしなやかな身ごなしで馬車のカーゴに乗り込む。
彼女の指先に操られるように風が吹き、パタンと檻の扉が閉じた

主の目配せで御者はすかさず馬に鞭をあてた。

「さ、参りましょ♪」

瑠霞姫は檻の中の夕鈴に極上の微笑みを投げかけた。

「ひ、ひええええ~~~っ!!!?」

ガラガラガラガラ…と華やかな馬車は走り出し
「お妃ちゃーん…」
建物の影から歯嚙みしながらも手出しできぬ浩大の目の前を通りすぎた。

かくして、ヒョウに扮した瑠霞姫は、意気揚々と金色ウサギの夕鈴を連れ去ったのであった。

*


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